基礎研究

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敗血症・多臓器不全の病態解明,治療開発

 ・集中治療を要する全身侵襲下において,腸管虚血および,腸管機能不全が,全身のホメオスターシス破綻に深く関与していると考えられます。ラビットにLPS(エンドトキシン)を投与する敗血症モデルを用いて,腸管局所の血流の評価を行っています。救命センターにおけるシンバイオティックス治療の成果を含め,新たな全身侵襲に対する腸管保護療法の開発を,基礎実験の側面からも進めていきます。


 ・多発重症外傷及び敗血症に引き続く多臓器不全に対し,全身性炎症反応(SIRS)をいかに効率よく抑制し,荒廃した臓器を再建していくかが,重要かつ急務を要する課題となっています。我々は,これを克服するために細胞移植治療を応用しようとしています。
 細胞移植治療は,今までに心筋梗塞,脳梗塞,脊髄損傷等に対し開発され,実際に臨床応用が始まっています。移植に用いる細胞は骨髄間質細胞,血管内皮前駆細胞,神経幹細胞等,目的に応じて使用されています。移植された細胞は,障害を受け脱落した組織を構成する細胞へと分化するだけでなく,組織保護的に働く分泌性因子を放出し,組織保護作用を発揮するとともに,抗炎症作用も有しているようです。
 我々は,ラットの敗血症・多臓器不全モデルに対して骨髄間質細胞を経静脈的に投与すると,生存率が改善すること,全身性の炎症を著明に抑制することを示しています。今後,そのメカニズムを明らかにするとともに,実際の臨床応用が可能となるように工夫していきます。

中枢神経系傷害に対する保護・再生医療

 神経細胞は一度障害を受けると,基本的には再生しないと考えられています。このため,救命センターに搬送される頭部外傷,脳梗塞,脳出血,脳炎等は,たとえ救命できても後遺症を残す可能性が高い疾患群です。また,心肺停止に対する救命率が上昇する一方,遷延性意識障害の克服が重要課題となっています。いかに侵襲に対し,中枢神経系を保護し,再生させるかを,我々は独自の視点から研究しています。


脈絡叢,脳脊髄液の解析

 中枢神経は,脳脊髄液という特殊な環境下に置かれています。神経の研究は,主にニューロンを中心に発展してきました。最近になり,ニューロンを支持する細胞群,すなわちアストロサイト,オリゴデンドロサイトの機能が,ニューロンと関連しながら,中枢神経の維持に重要な役割を果たすことが明らかとなってきています。更に我々は,これらの個々の細胞群を包括的に影響を与える可能性のある脳脊髄液に注目しています。地球を例にするならば,地球に住む生物が危機に陥った時,瀕死の生物を助けるだけでなく,大気とか海とか,生物を取り巻く環境の悪化にも注意を配らなければなりません。中枢神経環境を特徴づける脳脊髄液が,中枢神経系機能維持に重要な役割を果たしているのではないかと考えています。脳脊髄液のほとんどを産生する脈絡叢細胞を,ラット脳梗塞モデルの脳室内に移植すると,脳梗塞損傷を抑制し,予後が改善することを明らかにしています。脈絡叢からは,様々な神経保護作用を有する因子が分泌されているようです。今後,脳虚血性疾患だけでなく,多臓器不全における脳症を含め,集中治療を要する急性疾患における脈絡叢,脳脊髄液の役割を解明し,脈絡叢細胞を賦活化させることにより中枢神経系を活性化する治療の開発を行っていく予定です。


脳虚血疾患に対する脳保護

 我々の一つの目標が,蘇生後脳症の克服です。我々は,スナネズミを用いた脳虚血再還流損傷モデルを用いて,脳血流,脳温を測定するとともに,実態顕微鏡を用いて脳血管径を評価する手技を有しています。これまでに,脳虚血時間が長くなると脳血流の改善が悪く,脳温が上昇したままになることを明らかとしてきました。現在,低体温・低脳温における脳保護作用を再検討し,よりよい臨床への応用を目指しています。我々の一つの目標が,蘇生後脳症の克服です。我々は,スナネズミを用いた脳虚血再還流損傷モデルを用いて,脳血流,脳温を測定するとともに,実態顕微鏡を用いて脳血管径を評価する手技を有しています。これまでに,脳虚血時間が長くなると脳血流の改善が悪く,脳温が上昇したままになることを明らかとしてきました。現在,低体温・低脳温における脳保護作用を再検討し,よりよい臨床への応用を目指しています。


脊髄損傷に対する再生医療

 脊髄損傷に対する細胞移植治療は,世界的にもさまざまな角度から応用されています。代表的なものは,骨髄間質細胞を用いた治療です。非常に有望な治療ですが,欠点は,移植に用いる骨髄間質細胞を増やすのに培養する必要があり,移植までに1,2週間程の時間を要することです。我々は,ラット脊髄損傷モデルに対し,骨髄単核球細胞を脳室内に投与すると,損傷を抑制し,行動学的な機能改善を認めることを示しました。単核球細胞であれば,急性期に患者本人より回収し,そのまま移植することが可能です。

外傷モデルの開発と外傷による多臓器不全発症のメカニズムの解明,治療開発

 外傷学は奥が深いです。損傷を受けた局所的な臓器のみの障害に留まらず,直接的な損傷を受けていない多臓器が機能不全状態に陥ることが,臨床的にしばしば経験されます。どうしてそんなことが起きるのでしょうか?我々は,外傷モデルとして,ラットのクラッシュ損傷モデルを独自に開発してきました。クラッシュ症候群は,地震などの災害で,倒れた物に体が挟まれ,救出後に多臓器不全に陥る病態です。挫滅した筋肉から血液中に出てくるカリウムによる不整脈,ミオグロビン等による腎不全を回避しても,多臓器不全を併発する症例が存在します。我々のクラッシュ損傷モデルを解析したところ,局所的な下肢の圧迫損傷により,急性肺障害を来たすことが明らかとなりました。この病態に,血管内皮細胞障害が関与していることを示唆しました。血管内皮に保護的に働くトロンボモジュリン,ATIIIの投与が,クラッシュ症候群の生存率を改善することも明らかにしました。さらに,外傷における全身侵襲の解析,多臓器不全への移行を回避する新たな治療法の開発を推進しています。


更に,我々は,単に臓器を個別に評価するだけでなく,救急医学領域に関わる病態を全身として捉える努力を重ねています。全身―脳,骨髄,腸管―全身応答を,統括的に評価し,新たなhomeostasis pathwayを探索し,侵襲学を極めて行きたいと考えています。


救命センターの研修後に基礎研究をするのも良し,医師免許が無くても,救急医学講座で医学修士,博士を目指すのも良し,ですね。共同研究もwelcomeです。気兼ねなくご連絡下さい。